大腸がんは早期に発見して治療すればほぼ治癒が可能です。
大腸がんの死亡数は食生活の欧米化もあり、死亡者数は年々増加しています。近年、女性では死亡数のトップとなっています。
便潜血検査とは?
便に潜む血液の有無を調べる検査、いわゆる検便を行います。 便の採取は自宅で行う事が出来ます。便の表面を採便用の棒でまんべんなくこすり、通常2日間分の便(検体2本)を採取します。食事制限の必要もない簡単な検査です。
大腸がんやポリープがあると、便が腸内を移動する際に便と組織が擦れて血液が付着します。便潜血検査では便に血が混じっているかどうか調べ、目に見えないわずかな出血も検知することが可能です。 通常、食物が便として排泄される課程で便に血が混じることはありませんので、この検査で陽性と判定された方は「大腸がんの可能性がある」ため、消化器内科への受診(精密検査)が必要ということになります。
これまでの多くの研究から、便潜血検査による大腸がん検診は、早期発見そして死亡率の減少に有効であることが証明されています。
1日法? 2日法?
便潜血検査は、 1日法と2日法の2種類があります。違いは、1日分の便を取るか、2日分の便を取るかです。一般的には、2日法の方が大腸がんの発見率が高いことが分かっています。
大腸がんに便がこすれても、血が出て便に付くときと、付かないときがあります。また、早期の大腸がんの場合は、常に出血していないこともあり、2日検査することで、どちらかが陽性になる確率が上がります。
2回分の便を提出したうち、1回でも陽性反応があった場合は精密検査の対象となります。
便潜血検査の感度は?
便潜血検査の病変検出精度は、進行大腸がんへの感度が1日法で73.3%、2日法で85.6%といわれており、直接大腸内を調べる大腸内視鏡検査等の精密検査に比べると劣ります。
しかし、大腸がんを確定的に診断できる大腸内視鏡検査は、費用がかかり身体的なリスクもあることや、技術を身に着けた医師だけが実施可能で一日に数名しか検査できないことなどから、健康診断としてすべての人に実施するのは現実的ではありません。
便潜血検査の1回の検査感度は内視鏡検査ほど高くはありませんが、定期的に繰り返し検査を受け続ければ、検診としての効果は累積されていくことになります。
大腸がんの場合の前臨床期(がんになるまでにかかる時間)は約7年と推定されており、他のがんに比べると比較的長いため、その間に繰り返し検診を受けることで精度高く大腸がんを発見することが可能となります。
そのため便潜血検査は、毎年繰り返し検査するよう強く推奨します。
便潜血検査で陽性になったら?
「大腸から出血している状態」を意味し、悪化する可能性の高いポリープや、大腸がんといった消化器疾患が隠れているサインになります。
やはり、一番気を付けなければならないのが「大腸がん」ですが、大腸がんやポリープなどは症状がないことがほとんどです。症状がないことが安心材料にはなりませんのでご注意ください。ある程度進行してから出血や急な便通異常・体重減少といった症状が現れます。
術後の生存率は、がんの進行度に左右されますので、いかに早期発見できるかが健康長寿の秘訣になります。見方を変えれば、毎年行っている便潜血検査をきっかけに見つかったような大腸がんは、早期発見であるケースが多いのです。
そのことを知らなくて、便潜血検査で異常があっても放置してしまう方もいます。また、「硬い便が出たから肛門が切れたのだろう」「元から痔持ちだし……」と思い込み、精密検査を受ける機会をなくしてしまう場合も少なくありません。
また、多忙や検査への不安感のため、精査を受けないまま時間が経ってしまうこともあると思います。今日明日に急ぐ必要はないですが、なるべく早期に医療機関を受診することが大切です。
前述したとおり、大腸がんでも大腸ポリープでも大腸炎でも常に出血しているわけではないため、1回でも陽性反応が出てくれればラッキーという考え方で成り立っているのが便潜血検査です。
折角の病気発見のチャンスを逃さないように、躊躇することなく消化器内科専門医を受診するようにしましょう!
便潜血検査で陽性だった場合の病気は?
便潜血検査が陽性だった場合に考えられる病気は、大腸がんだけではありません。
一般的に以下の4つの病気が発見しやすいと言われています。
1)大腸がん
2)大腸ポリープ
3)潰瘍性大腸炎
4)痔
それぞれについて、詳しく解説します。
1)大腸がん
大腸にできる悪性腫瘍です。大腸がんができている場所は出血しやすく、大腸の運動や便が通過するときなどに、がんに触れて出血することがあります。 そのため、便潜血検査で便に血液が混ざっていないかを確認することで、間接的に大腸がんの可能性を判断考慮する材料になります。
ただし、常に出血しているとは限らず、必ず便に血液が混じるとは言い切れません。便潜血検査のタイミングで出血がなければ、陰性になることも十分考えられます。
大腸がんには、便に血液が混ざる他にも以下のような症状が見られます。
・便秘や下痢などの便通異常
・便が細い
・体重減少
・おなかの張り
・腹痛
便潜血検査が陰性であっても、上記のような症状が見られる場合は必ず受診するようにしましょう。
※出典:大腸癌治療ガイドラインの解説(金原出版)
2)大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の粘膜表面が突起したものを指します。ポリープは腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられ、さらに腫瘍性ポリープは良性のものから悪性となったものまで存在します。
腫瘍性ポリープは良性であっても放っておくと大きくなって、そのうち悪性化する可能性があるため、発見したら切除するのが望ましいポリープということになります。
大腸ポリープも大腸がんと同様に、便の通過などの刺激により出血することがあるため、便潜血検査はポリープを発見するのにも有効な検査といえます。
3)潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。炎症や潰瘍ができる原因は解明されておらず、国の難病(特定疾患)に指定されています。
潰瘍性大腸炎では、粘膜の炎症や潰瘍により、ちょっとした刺激でも出血しやすいため、下血や腹痛、下痢などの症状が出た際に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けて発見・診断されることが多いのですが、ごく軽度の潰瘍性大腸炎であれば無症状であるため、便潜血検査を受けることがきっかけで発見されることも少なくありません。
最近増えてきていると報告されている病気であるため、便潜血検査で陽性を示すことが比較的多いといえるでしょう。
4)痔
痔には、主に以下の3つの種類に分類されます。
・いぼ痔:直腸と肛門の境目より内側にできる【内痔核】と、外側にできる【外痔核】がある
・切れ痔:肛門の皮膚が切れたり裂けること
・痔ろう:肛門と直腸の間にある穴(肛門陰窩)に便が入り込み細菌感染を起こす状態
内痔核、外痔核、切れ痔は排便時に出血することがあるため、便潜血検査が陽性になりやすい病気といえます。
痔はデリケートな部位であるため、医師に見せることに抵抗を感じる人も多いでしょう。しかし、症状が進行すると生活に支障が出るため、痔を指摘されている人は早めに肛門科専門医を受診することを推奨します。
便潜血検査で陰性だったら?
「便潜血が陰性=大腸がんではない」ではありません。
残念ながらすべての大腸がんがこの検査で陽性になるわけではなく、あくまで1日目、2日目とも便に血が混ざっていなかったということでしかありません。
検査が陰性であっても、下痢、便秘、便が細いなどの便通の異常、便に血が混じるなどの自覚症状がある場合は、消化器内科専門医を受診し大腸内視鏡(大腸カメラ)検査のご相談をしてください。
繰り返しになりますが、現状で便潜血検査を上回る簡易な検査はなく、トイレの際にご自身の便の一部を採取して提出いただくのみで検査でき、体への負担がなく実施できます。
陰性と判定された場合でも、病気の早期発見のために、便潜血検査を毎年受けることが大切です。
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