■ 腎臓内科専門外来のご案内
腎臓内科外来では下記の疾患,症状に対応いたします。
- タンパク尿,尿潜血の相談
- 腎機能低下の相談
- 慢性糸球体腎炎の管理,IgA腎症の管理
- ネフローゼ症候群の治療と管理
- 急速進行性糸球体腎炎の治療と管理
- 多発性嚢胞腎の管理
- 慢性腎臓病の病診連携
- 急性腎障害の院内コンサルテーション
- 腎移植に関する相談(※ 腎移植の手術は秋田大学病院です)
なお,下記の症状につきましては泌尿器科外来をお勧めしています。
- 腎臓の腫瘍
- 膀胱や尿管の腫瘍
- 腎結石,尿管結石
- 透析療法:血液透析,腹膜透析
■ タンパク尿,尿潜血
腎臓は血液中の老廃物や不要物を尿にする臓器です。いわばゴミ処理場です。タンパク尿は,その腎臓にとても負担がかかっている時に出ます。タンパク質は人間にとってとても必要なものですから,尿中には漏れないようになっているのです。腎臓専門医から見れば,タンパク尿が出ているのは,家庭ゴミにお金が混じっているようなものです。タンパク尿が続いている場合には,腎臓の病気の可能性があります。一度,腎臓専門医に相談してみませんか。
必要な検査は:尿検査,血液検査,(腎臓の病気が強く疑われる場合)入院で腎生検
腎生検とは:うつぶせに寝ていただき,背中から腎臓に細い針を刺して腎臓の一部を採取する検査です。局所麻酔で行います。入院が必要な検査です。腎生検することの利点は,どんなことが腎臓に起こっていて,放置するとどうなるか,あるいはどんな治療をすれば良いのかが分かることです。未来の情報を得るための唯一の検査です。
腎生検がしにくい方:腎臓がひとつしかない方,腎臓が小さい方,腎臓癌が疑われている方,血液をサラサラにする薬を飲んでいる方,うつ伏せで30分程度我慢できない方,息を5秒程度止められない方,などです。もちろん検査の同意が得られない方には行いません。
■ 腎機能低下
腎機能の低下とは?:血清クレアチニンまたはeGFRで評価します。男性で血清クレアチニン1.2 mg/dL以上,女性で血清クレアチニン0.80 mg/dL以上の場合,腎機能低下の可能性があります。eGFRでは,60未満なら腎機能低下の可能性があります。
症状:腎機能は少々低下しても自覚症状は出ません。痛くもかゆくもありません。かなり腎臓が悪くなって,透析療法が必要になる一歩手前あるいは二歩手前くらいで自覚症状が現れます。個人差はありますが,だるい,食欲不振,吐き気などが出ます。
腎機能が低下する原因:様々な原因がありますが,主なものは,糖尿病,高血圧,脂質異常症などの生活習慣病,腎臓の病気,薬の副作用などが主です。最近は消炎鎮痛剤の長期服用で腎機能が低下する人が増えています。
■ IgA腎症,慢性糸球体腎炎
どんな病気か:タンパク尿や血尿がずっと続く病気を「慢性糸球体腎炎」といいます。慢性糸球体腎炎にも種類があるますが,最も多いのが「IgA腎症」です。IgA腎症は,初期には自覚症状がありませんが,放置すると40%が末期腎不全になります。診断には腎生検が必須です。病気の勢いが低い患者さんは,投薬せずに定期的な検尿チェックとなります。一方で,病気の勢いが強い患者さんには,強力なステロイド治療と扁桃腺摘出もお勧めすることがあります。この治療で早期のIgA腎症は落ち着かせることができますが,ある程度時間が経つと効果は期待できなくなります。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。
症状:初期には自覚症状はありません。尿検査で,タンパク尿や血尿が続きます。
必要な検査は:尿検査,血液検査,入院して腎生検
原因は:免疫の異常が原因ですが,そのメカニズムは解明されていません。
治療は:
- すべての患者さんに,食事療法(塩分制限)と定期的な検査をお勧めしています
- タンパク尿が多く進行しそうな患者さんには腎保護のための降圧薬をお勧めしています
- タンパク尿が多く,かつGFR 60以上の患者さんには,上記に加えてステロイド治療(と扁桃腺摘出)をお勧めしています→「IgA腎症へのステロイド治療について」を参照ください
- ステロイド治療にはいくつか方法があり,患者さんと相談して決めます
- すでにGFRが60を切った患者さんには,原則として血圧コントロール主体で対応しています
■ IgA腎症へのステロイド治療について
- 下記の3点をすべて満たす患者さんには副腎皮質ステロイドによる治療を勧めています。
- 副腎皮質ステロイドは,強力に炎症を抑え,免疫を抑制するホルモン剤です。
- 腎生検で,炎症の強いIgA腎症であることが示されている
- 蛋白尿が1日1グラム以上出ている
- 腎機能がまだ低下していない(GFR 60以上)
- ステロイド治療の目的:腎臓に起こっている炎症を沈静化することで,腎臓の寿命を延ばすこと(火事になっている家の火を消すようなイメージです)
- ステロイド治療の期間:6~9ヶ月間(病状によって,個人差があります)
- ステロイド治療のデメリット:胃十二指腸潰瘍,糖尿病,骨粗鬆症,易感染性(感染症に弱くなること),満月様顔貌,中心性肥満,高血圧など,個人差はありますが多くの副作用があります。
- ステロイド治療の意義:これだけ副作用の危険性があってもステロイド治療をお勧めするのは,副作用を上回るメリットがある場合です。ステイロド治療をしないことで,10~30年以内に末期腎不全となり透析療法が必要になりそうな患者さんにお勧めしています。
- ステロイド治療の種類:ふたつのステロイド治療法が行われています。ポッツィ(Pozzi)式と仙台式です。ポッツィ式は,世界の標準的な治療法です。仙台式は日本発の治療法で,より強力なステロイド治療と扁桃腺摘出を行います。治療が強力である分,IgA腎症を寛解させる可能性がありますが,治療の副作用や手術が必要なデメリットもあります。また仙台式は,日本では広く行われていますが,海外ではあまり認められていません。当院では,それぞれの治療の利点と欠点を説明して患者さんに選んでいただきます。
ふたつのステロイド治療
Pozzi方式 |
仙台方式 |
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治療 内容 |
内服ステロイド治療を約6ヶ月間つづけます。途中,3日間の点滴が3回あります。 |
扁桃腺摘出し,その2週間後からステロイド治療を開始します。3週間で合計9回の点滴があります。その後は内服ステロイド治療に移行し,およそ6ヶ月で治療が終了します。 |
治療の 目的 |
IgA腎症の進行を緩やかにすること |
IgA腎症の炎症を止めること(寛解を目指すこと) |
治療の 特徴 |
扁桃腺は取らず,ステロイド治療を行います |
扁桃腺を摘出して,より強力なステロイド治療が入ります。 |
利点 |
これは世界での標準治療です。 日本でも多くの病院で採用されている方法です。 |
世界では認められていませんが,この治療で完全寛解になる患者さんがいます。 日本でも多くの病院で採用されている方法です。 |
欠点 |
最大で3回の2泊3日入院が必要になります。 仙台式には治療の強さは劣ります。 ステロイド治療の副作用が起こりえます。 |
扁桃腺の摘出のため手術が必要になること。 入院期間は,扁桃腺摘出のための入院と,その後に3週間程度必要なこと。 世界のガイドラインでは認められていない治療法であること。 ステロイド治療の副作用が起こりえます。 |
■ 副腎皮質ステロイドの副作用について
副腎皮質ステロイドの投与により下記の副作用が起こりえます。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:これを予防するために胃薬を併用します。
- ざそう:いわゆる「にきび」です。
- 骨粗鬆症:3ヶ月以上服用を続けると骨密度が低下します。骨粗鬆症の薬を併用して予防に努めますが,それでも骨密度が低下する可能性があります。
- 高血圧とむくみ:体内に塩分が溜まりやすくなり,血圧が上がりやすくなり,むくみやすくなります。
- 易感染性(いかんせんせい):免疫抑制作用により感染症に弱くなります。通常の免疫力の人はかからないような病原体にも弱くなります。
- 糖尿病:血糖値が上がりやすくなります。境界型糖尿病と言われている方は,ステロイド治療で糖尿病になってしまいます。
- 精神神経症状:これは患者さんによって様々ですが,軽いものでは不眠やイライラ感,重い症状ではうつ症状,逆に多幸感などが現れます。
他にも細かい副作用は多数あります。
当科では,この副作用のデメリットを上回るメリットがある患者さんにステロイド治療をお勧めしています。
■ ネフローゼ症候群
どんな病気か:ネフローゼ症候群とは,大量の蛋白尿で全身がむくんでしまう腎臓病です。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。
主な症状は:全身のむくみ,体重増加,ひどい場合には呼吸困難
必要な検査は:尿検査,血液検査,入院して腎生検
原因は:様々ありますが多いのは,糖尿病,免疫の異常,薬剤アレルギーなどです。
治療は:原因によって治療が異なります。免疫の異常が原因ならば,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が効果があります。糖尿病の場合にはあまり効果が期待できません。
新しい治療:
(1) リツキシマブ(薬品名:リツキサン) Bリンパ球を消失させる生物学的製剤です。ステロイドがなかなか減らせない微小変化型ネフローゼ症候群の治療として認可されています。
■ 急速進行性糸球体腎炎
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)とは,発症からわずか数週から数ヶ月で腎臓の機能が壊滅する腎臓病です。発熱,食欲不振,体重減少など一見すると腎臓と無関係な症状を伴うことが多く,発見が遅れると腎臓だけでなく生命にも影響します。原則として入院していただき,腎生検を行います。急速進行性糸球体腎炎では1~2ヶ月間の入院治療が見込まれます。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。
■ 多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎は,自身の腎臓や肝臓に嚢胞(のうほう,袋のようなものです)が徐々に増えていく遺伝性腎疾患です。40歳までは自覚症状がないことが多いのですが,徐々に腎臓がふくらんでいき,その分だけ腎臓の機能が落ちていきます。60歳には半数が末期腎不全,つまり透析が必要な状態になってしまいます。進行を完全に止める方法は今のところありませんが,飲水とトルバプタン治療により進行を遅らせることができます。外来においては,進行の速さを調べて,効果が期待できる患者さんにトルバプタン治療をお勧めします。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。
新しい治療:
(1) トルバプタン(薬品名:サムスカ) 強力な水利尿剤です。常染色体優性多発性嚢胞腎の患者で,年間5パーセント以上腎臓が大きくなっていて,かつ腎機能が保たれている(GFR 15以上)方にトルバプタンを投与すると,進行が50パーセント抑えられます。現時点では,「進行している患者さんの進行を抑える薬」ですので,「進行していない患者さん」には認可されていません。デメリットは,1日4~5リットルの尿が出てしまうことです。なお,トルバプタン治療開始時には入院が必要です(処方ルールにて定められています)。
■ 慢性腎臓病の病診連携
遠方の慢性腎臓病患者さん向けの試みです。地域のかかりつけ医と連携して行います。患者さんは,3~6ヶ月おきに当院を受診していただき,尿検査,血液検査などを行います。腎臓専門医が今後の治療,相談,あるいは栄養指導などを患者さんに説明します。
■ 腎臓内科を受診する患者さんへ
- 診療ガイドラインに沿った国内で標準的な治療を提供します
- ガイドラインを超える治療が必要と判断した場合には,その旨を説明し同意いただいた上で行います
- お願い:診療時間が5~10分程度に限られているため,診療科外の症状相談が主体の場合,当該疾患診療時間が短縮します
- お願い:がん健診は皆さまが受けていただけますようお願いします。専門外来では腎臓内科に特化した診療を提供します。
■ 慢性腎臓病(CKD)の方にお勧めしたい生活習慣
慢性腎臓病(CKD)と言われた方にお勧めしたい生活習慣をまとめています。
最終更新日:2019/03/28 文責:奥山 慎
■ 運動
かつて「腎臓の悪い人は運動を避けるべきである」という考え方がありましたが,最近は「ある程度の運動はしたほうが良い」というふうに変わってきています。これは,「腎臓は運動で悪くならない」ことが定説になったからです。むしろ,適度な運動をして「腎臓は悪いけれど,他の部分は健康」でいるのが良いのです。
ただし,受診の前日には激しい運動を避けてほしいです。激しい運動により,血清クレアチニンは一時的に高くなるからです。これは筋肉の老廃物が一時的に増えているだけなのですが,「腎機能が悪くなった」ように見えてしまいます。運動後の「一時的な」血清クレアチニン上昇は,個人差があります。
■ 食事
食生活はとても大切です。水分,塩分,タンパク質,カリウム,リンについて説明します。
水分:一部の慢性腎臓病を除いて,基本的には制限はありません。ただし,極端に摂りすぎるのも極端に摂らないのも良くありません。
水分制限のある慢性腎臓病:尿が出なくなった血液透析の患者さん,入院を要するネフローゼ症候群の患者さん
水分を摂ったほうが良い慢性腎臓病:常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の患者さん,痛風(高尿酸血症)の患者さん
塩分:塩分は全ての慢性腎臓病の方が控えて欲しいです。日本腎臓学会と日本高血圧学会では1日6グラム未満を勧めています。これは秋田県人には厳しいと感じる方が多いと思います。秋田県人の平均塩分摂取量は,平成28年の調査で10.6グラムでした(美の国秋田ネットから)。全国平均は,9.9グラムでした。平均的な秋田県人の塩分摂取量の半分が目標となります。
タンパク質:タンパク質は肉,魚,豆などです。過剰なタンパク質は腎臓への負担になります。ですから「慢性腎臓病の方はタンパク質は取り過ぎに注意」なのですが,大きな問題があります。タンパク質を控えすぎると,筋肉が減ってしまいます。良かれと思ってタンパク質を控えすぎたら,筋肉が減って転びやすくなり,骨折して寝たきりになった方がいます。これでは本末転倒です。よって,タンパク質制限は腎臓のことだけ考えるなら控えた方が良いのですが,腎臓以外のこと(体力,年齢,腎臓以外の病気)を十分に考えて結論を出すべきなのです。以上から,タンパク質の摂取量は患者さんひとりひとりと腎臓専門医,管理栄養士が相談してで決めるべきです。
カリウム:カリウムは生ものに含まれる電解質です。腎臓の悪い方(特に,GFR 30未満の方)はカリウムが溜まりやすくなっています。カリウムが溜まると不整脈が起こりやすくなります。特に,カリウムが7 mEq/Lを超えると致死的な不整脈が起こりやすくなります。以上から,慢性腎臓病でGFR 30未満の方は生ものを避けてください。生ものには,生野菜,生の果物(ジュースも含みます),刺身などがあります。
リン:カリウムと同様に,腎臓の悪い方(特に,GFR 30未満の方)はリンが溜まりやすくなっています。リンが溜まると,じわりじわりと様々な良くないことが起こります。骨が弱くなったり,血管が石灰化して脳卒中や心臓病の原因になり,皮膚がかゆくなったりします。リンは様々なものに含まれていますが,特に動物性タンパク質(肉や魚),食品添加物などに含まれています。
■ タバコ
タバコは慢性腎臓病(CKD)の重症度にかかわらず絶対にお勧めしません。喫煙される方は,ぜひとも禁煙に取り組んでください。これは減塩と同様に最優先です。タバコを吸うことで血管が狭くなります。腎臓は血管のかたまりです。タバコを吸うごとに腎臓の血のめぐりが悪くなり,ギリギリで頑張っていた糸球体や尿細管がダメージを受けます。
■ お酒
お酒は腎臓に悪さをしないようです。こう書くと喜ぶ方が多いと思います。ですが,あくまで「腎臓には」悪くないわけで,肝臓には間違いなく悪いです。それと,お酒自体よりもツマミに問題があります。たいていのお酒のツマミは塩分が多すぎます。私の知る限り,かつての秋田県人は,塩をなめながら日本酒を飲む方がいたくらいです。酔ってしまうと,ついついツマミ(塩分)を摂りすぎてしまいます。お酒は適量にお願いします。
■ よくある質問 腎臓内科
患者さんからのよくある質問をまとめています。
最終更新日:2019/04/03 文責:奥山 慎
質問:尿検査でタンパクが陽性でした。慢性腎臓病でしょうか?
回答:もし,3ヶ月以上にわたってタンパクが陽性なら慢性腎臓病の可能性があります。
解説:蛋白尿には,「生理的な蛋白尿」と「病的な蛋白尿」があります。まず「生理的な蛋白尿」かどうかを検討します。そのためには受診して適切な尿検査を受けるのが良いでしょう。ただし,受診(尿検査)前日には過度な運動を避け,十分な睡眠を取ってください。理想を言えば,蛋白尿の検査が最も適しているのは,早朝第一尿です。運動後には蛋白尿が陽性になりやすくなります。運動直後の尿検査はお勧めできません。
質問:毎年健診で蛋白尿と言われています。自覚症状はありませんが,受診が必要でしょうか?
回答:ぜひ受診してください。かかりつけ医がいれば受診して,腎臓専門医の受診が必要かどうかを判断してもらってください。
解説:蛋白尿が続いている場合,慢性腎臓病(CKD)の可能性があります。もし,慢性腎臓病ならば,いまは自覚症状がなくても10~50年後に悪化しているかもしれません。
質問:腎機能が悪いと言われました。血清クレアチニンが高いと言われました。eGFRが低いと言われました。どうすればいいですか?
回答:いずれも「腎臓の機能が低下している可能性がある」という意味です。本当に低下しているかもしれませんし,一時的に検査結果が異常になっているのかも知れません。まずは,かかりつけ医に相談し,腎臓専門医の受診が必要かどうかを判断してもらってください。
質問:腎臓が悪くなると,どうなりますか?
回答:血圧が上がり,貧血になり,骨が弱くなり,脳卒中や狭心症や心筋梗塞を発症しやすくなり,やがて命に関わります。
解説:腎臓には4つの機能があります。(1) 血液中の老廃物・不要物を尿にして捨てること,(2) 血圧を調節し,むくまないようにすること,(3) 赤血球をつくる命令を骨髄に出す,(4) カルシウムの吸収を助けることです。腎臓が悪くなると(1)~(4)すべてがうまく行かなくなります。結果として,高血圧になり,むくみ,貧血になり,骨が弱くなります。そして,身体に老廃物・不要物が溜まりまくって全身の具合が悪くなります(尿毒症といいます)。腎臓が悪くなると,脳卒中(脳梗塞や脳出血),狭心症,心筋梗塞を起こしやすくなることが知られています。
質問:末期腎不全と腎代替療法って何ですか?
回答:腎臓の機能が10%程度まで落ちている状態を「末期腎不全」と言います。この状態では,自分の腎臓だけで生きていくのが困難です。そのため,自分の腎臓の肩代わりをする治療を「腎代替療法」といいます。腎代替療法には,血液透析,腹膜透析,腎移植の3つがあります。
解説:3つの腎代替療法について簡単に説明します。
(1) 血液透析:人工透析とも呼ばれます。機械を使って血液から老廃物・不要物を取り除く治療法です。週3回,1回4時間必要です(個人差があります)。血液を効率よく出し入れするために,シャント手術かカテーテル挿入が必要です。
(2) 腹膜透析:自分の腹腔に透析液を入れて,1日に4~5回出し入れする治療法です。出し入れの操作は自宅でも職場でも学校でも可能です。しかし,清潔操作で行わないとおなかに雑菌が入り腹膜炎になります。透析液を出し入れするためのカテーテル留置手術が必要です。また,徐々に自分の腹膜に負担がかかるため,10年は保たない治療法です。
(3) 腎移植:健康なドナーから腎臓を1つ提供いただき移植する生体腎移植と,ドナー提供意思のあった方からの献腎移植(死体腎移植)があります。いずれも,手術後に安定すれば3ヶ月に1回の受診で良くなります。ただし,拒絶反応を抑えるために生涯にわたって免疫抑制薬を内服しなければ成りません。
質問:家族または親戚に「多発性嚢胞腎」と診断された人がいます。受診が必要でしょうか?
回答:自分も同じ病気かどうかを知りたければ,どうか受診してください。一方で,あなたには「受診しない権利」もあります。周りからの強制ではなく,自分の意思で受診してください。
解説:常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は,親から子供に約50パーセントの確率で遺伝します。進行速度や重症度は,親子で異なることが多いです。重要なことですが,遺伝する疾患と分かったとき,自分のみならず家族やパートナーにも影響するかもしれません。実際,他者に促されて受診し,「受診しなければ良かった」と仰る方もいます。受診を勧めた側は,病気でなければ「良かった」と言い,病気ならば「早く見つかって良かった」と言います。しかし,受診した方が受け止めきれない事例もあります。どうか自分の意思で受診してほしいです。