多焦点眼内レンズを使用した白内障手術
目の調節機能は水晶体が膨らんだりしぼんだりして行われますが、年齢とともにこの機能は低下していき、一般に老眼と呼ばれる状態となります。老眼は遠視も近視もない方で45歳くらいから自覚し始め、徐々に進行していきます。白内障手術によって挿入される眼内レンズもそのような調節機能を持っていません。したがって通常の単焦点眼内レンズを挿入すると、遠方がよく見えるようにした場合は老眼鏡が、近方がよく見えるようにした場合は遠方を見るための遠用眼鏡が必要になります。多焦点眼内レンズは遠方と近方(約40cm)の両者にピントが合うように設計されていますので、日常生活において眼鏡に依存することが単焦点レンズを挿入した場合と比較して少なくなると言われています。
- 日常生活の大部分は眼鏡がなくても不自由しなくなりますが、眼鏡が全く必要なくなるという訳ではありません。
(ア)近方(約40cm)・遠方ともに良好な視力が得られるので、日常生活において眼鏡を装用する必要はほとんどありません。
(イ)30cm付近や、70cm~1m程度の距離を見にくいと感じるときは眼鏡を装用したほうが楽になる場合もあります。 - 視力の立ち上がり方には、順応期間があります。
(ア)多焦点眼内レンズを通した見え方に慣れるための順応期間があり、手術直後から最良の視力が得られるとは限りません。
(イ)両眼に挿入後、最良の視力が得られるまでに半年~1年程度かかる場合もあります。 - どの距離もくっきり見える若い頃の見え方とは異なります。
(ア)近方視力:良好な近方視力を得られるのは約40cmの距離です。
(イ)中間視力:近方(40cm)と遠方の見え方が良好なため、その間の70cm~1mの距離が見えにくく感じる場合があります。
◆手術後の時間経過や両眼挿入によって改善されます。
◆書店の棚にある本が見えづらい時は、顔を近づければ見えるので、術後の見え方になれる事で眼鏡を必要としなくなる方もいます。 - コントラスト感度について
像がくっきり見えない感じがするなど、コントラストの低下を感じる場合もあるかもしれませんが、日常生活に支障をきたす程のコントラストの低下ではありませんし、手術後の時間経過とともに、その症状は改善されます。 - 夜間の見え方は、若い頃の見え方とは異なります。
暗い所で強い光を眩しく感じたり、点光源の周りに輪が掛かって見えることがありますが、日常生活に支障をきたすものではありません。術後の時間経過とともに慣れてくると言われています。 - 後発白内障
白内障術後に眼内レンズを支えるために残してある後嚢(水晶体の後面の膜)が濁ることを後発白内障と言いますが、この後発白内障が発症した場合、単焦点レンズに比べ、視機能の向上のために術後早期に治療(YAGレーザーによる後嚢切開術)が必要になる可能性があります。 - 手術中の合併症
(ア)破嚢(はのう)、チン氏帯脆弱や断裂:多焦点眼内レンズを挿入する予定で手術を開始しても、水晶体嚢が極端に弱かったり、破れるなど、予期せぬ合併症が起きた場合は挿入できない、あるいは挿入しない方が良い場合があります。
(イ)術後感染:頻度は少なく、1,000~2,000例に1例の頻度で起こるものですが、一度起こると視機能に重大な影響を及ぼしかねないものです。不幸にして起こった場合は適切な治療は行いますが、何より大事なのは起こらないように予防することです。点眼や安静など術前術後の指示を守ってください。
診療費について(当院の場合)
診療内容:多焦点眼内レンズを使用した水晶体再建術(白内障手術)
費用:レンズ費用については こちらをご覧ください。
※※先進医療に含まれない「入院料、診察、検査、薬剤等」については、一般の健康保険の対象となります。健康保険の自己負担率に応じてのご負担になります。